Hilo blog 3/20 生物としての静物
2010-03-20
自分の好きな本の話も書いていこうと思います。
・・・どれだけ興味のある方がいらっしゃるか分かりませんが。
「生物としての静物」
開高健さんの著作です。生きて居られればちょうど80歳。
お酒から釣り、パイプそして蚊取り線香まで開高さんのこだわりや思いが綴られているのですが、一編読み終わるたびに、「今度の休みはパイプでも買いに行こうか、今から始めれば死ぬまでには様になるだろう。」
そんな気になる。
当然、実際に買いに行ったりはしないのですが洒脱でハードボイルドな文章がそんな気にさせるのです。
鍼灸においても、様々な種類の道具を使い分けるのですが、同じ物であっても手になじむ物とそうでない物があります。
不思議なのですが、鍼灸の道具も実際に手にとってみないと安心できません。
そして、手に入ってからも馴染ませる作業が必要でしばらくは手の上で転がしたりしてすぐには患者さんに使用しないのです。
自分でも面白いなぁと思うのですが、そうでなければ十分な治療効果が望めない気がします。
その気持ちを代弁する文章が、この本にありました。
「何十万本と一つのブランド万年筆が製造されるのに、使用者の指と化し果てるまでになじみきれるのは一本か二本あるかなしであるという事実は興味深い。・・・中略・・・ヒトには個性があり、癖があり、好みがあって、そこにこめられた心は不可侵であり、小さな聖域であって、どうしようもない性質のものである。・・・中略・・・偏愛はつつましく器物内にとどまって、他の情熱のようにドアの外にとびだして他人を頭から説教したり、血を流したり、涙を落とさせることがないので、清らかである。」
うーん、開高さんの文章は凄い。
横浜 ヒロ鍼灸マッサージ院 院長の徒然なブログ
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